導入事例

シリーズ6 卸売業でのDX活用

卸売業、我が国でこれまでたいへん重要な役割を果たしてきました。卸売業は、小売業とメーカーの中間にたち①大量仕入→少量販売、②在庫保管、③小売業の販売促進支援(リテールサポート)、④金融等の役割を担ってきたのです。

この4つの機能が、DXの活用により進化してきています。また、消費者への直販など、事業再構築にチャレンジするケースもあります。2つの事例をご一緒にみていきましょう。

なお、これまでの回では、小売業・サービス業・飲食業をとりあげており、その際には「私自身が消費者として体験した事例」をお話してきました。今回からは、BtoB(企業対企業)をテーマにするにあたり、私がコンサルタントとして支援した事例をご紹介いたします。

(1)倉庫での作業ミス・出荷ミスをなくす

私がものづくり補助金を使って、オートバイのタイヤを扱う卸売業の支援をした事例をご紹介します。その会社は2019年、都内から埼玉県に本社を移転しました。売上増加に伴い、物流倉庫の拡大が必要になったからです。

オートバイのタイヤは、タイヤの溝の形状やサイズ等、細かい違いがあります。ベテランの作業担当者は目視で見分けることができますが、新人ではそうはいきません。商品別に棚に置かれていますが、間違った品番が置かれているケースもありました。そのため、誤出荷や積み残し等が発生していました。

そこでその会社は、タイヤにセンサーをとりつけバーコードでタイヤを見分ける仕組みを構築したのです。タイヤのピッキング時と出荷時に、バーコードでチェックをすることにより、作業効率・正確性が格段にアップしました。その「IoTを活用した在庫管理・出荷管理システム」を構築するにあたり、ものづくり補助金を利用しました。

この会社は「夕方5時までの注文は、当日出荷」というサービスを以前より実施していました。売上拡大に伴い取扱量が増加してもなおこのサービスを提供し続けるためには、ITを使った仕組みを構築せざるをえませんでした。新社屋で倉庫スペースは倍増しましたが、物流担当者の人数は増えていません。

(2)卸売業が消費者直販に進出する

私が支援しているアパレル雑貨の卸売業があります。この会社は創立100年を迎えた老舗企業ですが、売上高はピーク時の半分以下となっています。2年前には少し売上が伸びたのですが、その理由は「競合企業の閉鎖により、顧客が流れてきた」ためでした。

コロナ禍で小規模衣料品店の閉鎖が続き、このままでは売上がさらに減少することは避けられません。そこで従来から考えていた「小売業への進出」を実行に移すことにしました。

具体的には、消費者向けのECサイト開設です。

その時にコンサルティングに入った私は、「小売業向けECサイトを、卸売業にも活用したらどうか?今はコロナ禍で展示会も開けず、対面での商談もできない。一つのECサイトで、卸売と小売を同時に実施すればよい」とアドバイスさせていただきました。商品の写真や説明文は全く一緒で、相手が小売店か消費者かによって「掛け率」を変える仕組みをサイト上で構築したのです。ようは、相手が小売店の場合は「卸売」となり、低い掛け率で自動的に計算されます。

これまでは紙とFAXで受発注していたものが、ECサイト形式のオンライン入れに変わるのです。この仕組みを、小規模事業者持続化補助金を利用して構築していく計画です。

(3)補助金の活用

ドラスティックな事業改革が求められている卸売業では、ぜひ「呼び水」としての補助金活用もご検討ください。初期投資の一部を補助金で補完することで、新規事業立ち上げに弾みがつき、資金繰りの円滑化につながります。

卸売業での補助金活用例を、以下にご紹介します。

補助金名 対象業務 活用例
小規模事業者 販売促進 CMS*を利用したサイトの新規制作
IT導入補助金 事務作業でのIT利活用 在庫管理・販売管理・会計を連動させるソフトの導入
ものづくり補助金 新商品・サービス開発(既存事業も可) IoTを用いた在庫管理サービスを開発による倉庫内作業の改革
事業再構築補助金 新商品・サービス開発(新分野進出・業態転換等) 卸売業の倉庫部分を改築し、小売店舗とする

*CMS:Webサイトの構築・管理・運用を簡易に実施する仕組み。WEB上でサービスにログインし、文字や画像を簡単に書き込むことができる。WordPress等が知られている。

川口商工会議所では、上記の補助金について専門家に相談できます。専門家のアドバイスをうけて事業計画を策定することは、たとえ補助金を使わないとしても、自分のビジネスのブラッシュアップとなりますので、ぜひご利用ください。

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