導入事例

第1回 DXのイロハ(1)中小・小規模事業者が取り組むDXとは?

ITコーディネータ・中小企業診断士 長戸 美樹

いま、私たちのまわりに「DX」という言葉が飛び交っています。今日はこの「DX」の考え方、最初の一歩を踏み出すことの大切さをお伝えします。

(1)埼玉県DX推進支援ネットワーク

埼玉県では、2021年11月に「埼玉県DX推進支援ネットワーク」が立ち上がりました。県庁・市役所・金融機関・IT事業者・専門家が一致団結して、埼玉県のDXを力強く推進していくための組織体です。

金融機関としては、とくに中小・小規模事業者の日常業務を支える信用金庫が数多く参加しています。

このように、埼玉県内のすべての企業、特に中小・小規模事業者の皆さんまで含めて、誰一人取り残さずにDXの波に乗るための取組が始まっています。

(2)DXの定義

ここで改めて、DXの定義をみていきましょう。経済産業省では平成30年に「DX推進ガイドライン」を発表しており、そこでは以下のように定義されています。

※「DX推進ガイドライン」は現在では削除

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

この定義には、重要な意味があるのです。それは文章の最後の「競争上の優位性の確立」というキーワードです。単に社内業務の効率化だけでは、競争上の優位にはつながりません。つまり、DXは「取引先や顧客を巻き込み、市場で優位性が認められ、会社の売上・利益に貢献する」ものなのです。ここでは、「自社の強みを活かし、市場で選ばれる企業である」ことが求められます。

このキーワードを聞くと、確かに「単なるIT化ではなさそうだな・・・」と思えてきますね。

コロナ禍で業務への取り組みが制限される中、売上・利益の減少に悩む事業者様は数多くいらっしゃいます。給付金・緊急融資等で必要な資金手当てをしながら、未来に向けて「何をすれば一歩進めるのか?」を考えなくてはいけない時期です。ここで、DXのチカラで費用をほとんどかけずに業務のしくみを変え、売上利益の向上に貢献するとしたら・・・いかがでしょうか?

(3)DXの実例

ここで、具体的にDX推進のイメージをもっていただくため、実例をあげてみましょう。

ある企業が、アナログからデジタルへ業務を変革していくステップ例です。






手書きで、カーボン紙で見積書や請求書を書いていた。

会計も、税理士さんに領収書等を丸投げしていた。





パソコンを購入し、エクセルで見積書を作成するようになったが、実際に商談成立した取引のみを納品書・請求書へ転記する作業が負担であった。また、顧客台帳や会計等は別であった。



販売管理・在庫管理ソフトを導入し、いちどの入力で見積・納品・請求につながり、出荷と在庫の自動連動等ができるようになった。しかし、受発注や会計の自動化にはいたっていない。








対顧客:WEB受注システムを導入し、顧客は「在庫の有無・納期」等が即時に把握できるため利便性が高まった。営業担当は、お客様視点の商談や提案に時間をさけるようになった。

社内業務:顧客の発注データを、その後の在庫管理・販売管理・会計業務につなげ、事務処理の省力化・正確性の向上につながった。リアルタイムで現状の売掛・入金等が反映されるため、正確な資金繰り把握・迅速な営業戦略立案につながった。

このように、パソコンのエクセル活用からスタートした業務効率化は、最終的に「お客様を巻き込んだ業務改革」につながります。他社に先駆けて便利な仕組みをデジタルで提供できる会社は、競合他社に対して優位性をもち、お客様に選ばれ、多くの付加価値を生みだしていくのです。

ただし、最初からレベル3を目指す必要は全くありません。最初の一歩を踏み出すことから、スタートです!そして、一つ一つの業務をレベルアップし、最終的に「自社に適したレベル3」を目指すのです。

(4)中小・小規模事業者が取りくむDXとは?

DX実現のためにシステムを導入したり、業務改革をしたり・・・とても大変そうに見えます。ですが、いまは、費用をほとんどかけなくても「レベル0→レベル1→レベル2」とステップアップしていく方法があります。

これは、川口商工会議所で提案している「身の丈DX」の実現です。スマホ・パソコン等に搭載されている様々な機能や、インターネット上に提供されている無料のしくみを利用して、「費用をかけずにまず始めてみる」ところからスタートします。

その際、DX推進の専門家が事業者のみなさまと相談しながら、業務のどの部分から「合理化、省力化」を進めていくかの道筋をご一緒に考えます。

埼玉県全体でDX推進の機運が高まる今、ぜひ、アナログ作業が残るレベル0・レベル1から一歩抜け出して、DXの考え方を取り入れた業務改革を進めていきませんか?
アナログ作業を、無料または安価にデジタル作業にかえていく方法があるのです。そのためにぜひ川口商工会議所に相談してください!専門家派遣やセミナーで、様々な情報を提供し、解決方法をご一緒に考えます。

次回は「DX、本当にうちの会社でもできるの?」という疑問にお答えするため、さまざまな実例をご紹介します。

筆者紹介:長戸 美樹(ながと みき)

商社・製造業等の勤務を経て、2002年に中小・小規模事業者向けコンサルタントとして独立開業。

NPO法人埼玉ITコーディネータ 副理事長、埼玉県DX推進支援ネットワーク メンバー。

埼玉県内の中小・小規模事業者向けに、身の丈にあったDX推進支援を実施。新たなステージに踏み出したい事業者に対し、戦略策定・事業計画策定・事業実施時の伴走支援を一気通貫で手掛ける。

ページトップに戻る